フィルム付着物の分析
フィルム(シール)の表面に白色の透明な異物が確認されました。サイズも500μm以上とかなり大きなものです。目視による観察では、上層フィルムと一部つながっている様に見えます。また、その感触は柔らかく弾力のあるものです。上層フィルムが異物全体を覆っているかは不明です。よって断面を切り出し、SEM-EDSで異物の拡大観察及び元素分析を実施、その結果をふまえてFT-IRによる組成調査を実施しました。
実体顕微鏡及びマイクロスコープ観察し異物の状況確認を行いました。異物の感触は柔らかく、一部上層フィルムとつながっていることが確認できます。異物を半分にカットし、①SEM-EDSにて形態観察及び元素分析、②FT-IRで成分の推定を行いました。
①SEM-EDSでの形態観察及び元素分析
SEM観察にて、異物の色合いが濃い(黒っぽい)ことから試料台の材質より低い原子番号の元素を多く含む可能性が高いことが伺えます。(低真空ModeでのZコントラストによるもの)また、上層フィルムと一部つながっておりこれを考慮してFT-IR用にサンプリングする必要があります。
EDSによる異物部分の元素分析では、C,O,Mg,Al,Cl,Cuが検出されました。
上層、下層、粘着層も同様に分析を行いましたが、異物の成分を決定づけるような結果は特に得られません。
観察像と検出元素、感触が柔らかかったことをふまえると、有機物であると推定されます。
②FT-IRでの成分推定
FT-IR計測の結果、2800~3000,1450cm-1にパラフィンに起因するピーク、1730,1250,1170cm-1付近にエステルに起因すると思われるピークが検出されました。
ライブラリー検索の結果、アクリル系粘着剤とほぼ一致し、指紋領域においてもほぼ同じ波数にピークが確認されたことから、異物はアクリル樹脂であるものと思われます。
表層や下層とは異なり、粘着層とほぼ同じ波形形状を示していることも確認されたことから、粘着層の残りがいずれかの工程で表層に付着したものと推測されました。