異物分析

製品に異物が付着や含有していた場合、その異物の成分を調査することで解決策を模索する情報が得られます。異物が発生した時期、場所、状況など、周辺環境の情報が重要な手がかりとなり、異物の推定や発生経路の検討には欠かせない情報となります。また、異物のマクロ観察を行うことでおおまかな情報(金属片、樹脂、生物由来、etc)が得られます。
これら事前情報に基づきその異物に適した分析方法を実施し、異物の性状を推定するとともに発生経路の検討を行います。

異物分析の流れ 異物に関する情報のご提供→マクロ観察[実態顕微鏡 マイクロスコープ]→ミクロ観察[走査型電子顕微鏡(SEM)] 元素分析[エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDS)] 赤外分光分析[赤外分光分析(FT-IR)] 結晶成分分析(XRD)

配管内部白色付着物

冷却水の配管を交換した際、配管内部に白色の付着物(異物)が確認されました。この白色の付着物をXRD(X線回折装置)で測定し、ライブラリとの比較により異物の推定を行いました。

配管内部に白色の異物

冷却水配管を切断し内部を確認→白色異物を採取→X線解析装置によるスペクトル測定

ライブラリとの比較により、異物のX線回折スペクトルは炭酸カルシウム(CaCO3)と同様のパターンを示していることが分かります。
一般的には水道配管内の白色異物(浮いていないもの)は、水のミネラル分が反応し残っているケースがよく見られます。今回も同様の事象と推定されました。

測定条件

  • 管電圧40kV
  • 管電流40mmA
  • 走査速度20°/min
  • 走査範囲5°~70°
  • 走査軸2θ/θ
  • Niフィルター使用
異物のX線解析スペクトルとライブラリサーチ

ダンボール付着物の分析

下の写真はダンボール箱に白色の異物が付着したものです。まず、目視により外観観察を行ったところ、異物は白色の粉で、飛沫状に飛び散った形跡がありました。これは異物が何らかの液体に溶解した状態でダンボールに付着し、その後乾燥して析出したためと思われます。異物の一部を採取し、X線回折装置によりスペクトルを測定して異物の同定を行いました。

ダンボール表面に白色異物→異物を採取 異物のX線解析スペクトルとライブラリサーチ

ライブラリーとの比較により、異物の主成分は硫酸カルシウム(CaSO4)であることが分ります。このダンボール箱が保管されていた倉庫は天井に石膏ボードが使用されており、老朽化により雨漏りが発生していたことから、浸水により石膏が溶解し、ダンボール箱に落下したものと思われます。

測定条件

  • 管電圧40kV
  • 管電流40mmA
  • 走査速度20°/min
  • 走査範囲5°~70°
  • 走査軸2θ/θ
  • Niフィルター使用

フィルム付着物の分析

フィルム(シール)の表面に白色の透明な異物が確認されました。サイズも500μm以上とかなり大きなものです。目視による観察では、上層フィルムと一部つながっている様に見えます。また、その感触は柔らかく弾力のあるものです。上層フィルムが異物全体を覆っているかは不明です。よって断面を切り出し、SEM-EDSで異物の形態観察及び元素分析を実施、その結果をふまえてFT-IRによる組成調査を実施しました。

付着物を実体顕微鏡にて観察 感触:柔らかい 上層フィルムと一部つながっている?

付着物をマイクロスコープにて拡大観察 切断しての観察により、上層フィルムと一部つながっていることが確認された

実体顕微鏡及びマイクロスコープ観察し異物の状況確認を行いました。異物の感触は柔らかく、一部上層フィルムとつながっていることが確認できます。異物を半分にカットし、①SEM-EDSにて形態観察及び元素分析、②FT-IRで成分の推定を行いました。

SEM-EDSでの形態観察及び元素分析

SEM像及び元素分析結果 SEM像(異物断面)フィルム構成(3層)上層下層粘着層に分かれている 異物の一部はフィルムとつながっている EDSによる元素分析(異物断面) 異物断面の元素分析結果 検出元素 C,O,Mg,Al,Ca,Cu

SEM観察にて、異物の色合いが濃い(黒っぽい)ことから試料台の材質より低い原子番号の元素を多く含む可能性が高いことが伺えます。(低真空ModeでのZコントラストによるもの) また、上層フィルムと一部つながっておりこれを考慮してFT-IR用にサンプリングする必要があります。
EDSによる異物部分の元素分析では、C,O,Mg,Al,Ca,Cuが検出されました。
上層、下層、粘着層も同様に分析を行いましたが、異物の成分を決定づけるような結果は特に得られません。
観察像と検出元素、感触が柔らかかったことをふまえると、有機物である可能性が高いと推定されます。

SEM-EDSの条件

  • 低真空Mode20Pa
  • 加速電圧15kV
  • 観察倍率100倍
    (SEMモニター上で)
  • カウント数ライブタイム50sec
  • 黄色枠線内で元素分析を実施

②FT-IRでの成分推定

異物のFT-IR計測結果をライブラリー検索 ライブラリーでヒットしたスペクトルと比較 3000cm-1付近と指紋領域に類似箇所

FT-IR計測の結果、2800~3000,1450cm-1にパラフィンに起因するピーク、1730,1250,1170cm-1付近にエステルに起因すると思われるピークが検出されました。
ライブラリー検索の結果、アクリル系粘着剤とほぼ一致し、指紋領域においてもほぼ同じ波数にピークが確認されたことから、異物はアクリル樹脂であるものと思われます。
表層や下層とは異なり、粘着層とほぼ同じ波形形状を示していることも確認されたことから、粘着層の残りがいずれかの工程で表層に付着したものと推測されました。

FT-IR条件

前処理:上層とつながっている部分及び上層が上にかぶっていることも考慮し、異物の内部のみ切りだしてKBrプレートに挟み込み、プレスして薄くした。

  • 計測方法顕微透過法
  • 計測波数650~4000cm-1
  • 分解能4cm-1
  • アパーチャ径□50μm程度

※透過測定の前処理として、一般的に用いられる方法(錠剤法)で、赤外吸収の少ないKBrでプレスして錠剤に固める方法。

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